今日は、兼任教員としてリポート添削をしていて気づいたことを書いてみたいと思います。テーマは、論述の書き出しの「1字下げ」についてです。
今週、あるWスクールの学生からのリポートが15通まとめて届きました。添削したら、長文問題の記述で全員が「1字下げ」をしていなかった事実に遭遇しました。
(Wスクール:専門と大学卒の資格が同時に取れるよう2つの学校に在学すること)
日ごろから、「1字下げ」をしていないリポートが多いとは感じていました。しかし、添削するリポートすべてが「1字下げ」していなかったというのは初めてでした。
Wスクールの学生なので20歳前後と思われます。
同時に届いた社会人学生のリポートは8名中5名は「1字下げ」が出来ていたので差を感じました。
私は、「1字下げ」をしていないリポートには、論述の仕方の心得えとして「1字下げ」を促すようコメントをしていました。読みやすくなること、論述の品が向上すると思うからです。
しかし、今回の出来事から、自分が当たり前だと思っている「1字下げ」のことを改めて振り返ってみることにしました。
まずは、気になって切り取っておいた読売新聞の記事を探しました。
2017年2月1日夕刊の11面です。「改行後のマナー危機」、「若者は1字下げない」
と大見出しで書かれた記事です。願書の志望動機などで、1字下げをしていたのは83人のうち41人とありました。つまり、残り42人が1字下げをしていない。およそ半数の人が1字下げをしていないことになります。
また、記事では昨年あたりからこうしたケースが目立つようになったとあります。今回の事例と年齢的にも符合しそうです。
文部科学省では、学習指導要領では、文章の改行は3,4年生で学ぶが、1字下げは「必要性の評価が定まっていない」として明示していないとも書いてありました。
出所:読売新聞 2017年2月1日夕刊 11面
また、最近のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及で短文に慣れているため1字下げない書き方が広まっているともありました。
そこで、手元にある10数冊の論文や作文の書き方について、手当たり次第に調べてみましたが、「1字下げ」のことを書いているものになかなか行き当たりません。
ようやく、1冊見つけたのが以下です。
入門 原稿の書き方 豊沢富雄著 のp.92に、こう書いてあります。
原稿用紙については後述するが、さしずめ最小の約束事として、次の二点を覚えよう。
①書き出し、行をかえるときは一字下げて書く。
②、。「」などは、1マスとる。
出所:日本能率協会マネジメントセンター発行 入門 原稿の書き方
私が理解しているそのままのことが書いてありました。この本は1991年11月初版でした。しかし、この時代はこれが当たり前だったというわけではないようです。同時代の他の多くの本は、著書の文章では「1字下げ」を行っているものの、その作法を解説していないのでした。「そんなことは当たり前として取り扱っていないのかしら」と思ったほどです。
さて、次に、Webで「1字下げ」を検索してみました。いろいろな意見がありますが、総じて最近のスマホなどを用いたSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)においては、1字下げをしないほうが読みやすい。むしろ、大切なのは、行間を開けることのほうだとも書いてあります。
参照例:スマホが「文頭一字下げ」を殺す? 65%が選ぶその有無からルールの必要性を考える - YU@Kの不定期村
ネットワーク時代は表現手段も、確実に変化させているのでしょう。
ざっとではありますが、だいたい状況はこんな感じと把握できました。
では、今後のリポート添削をどうするかです。
私の結論は、「しばらくは、今まで通りに「1字下げ」を指導していこう」です。
私が指導する方々は、学生として大学の卒論など論文を書く心得えを身につけてほしい人たちです。また、卒業しビジネス社会でリポートを提出する場合もあるでしょう。そうした世界では、受け取る側や評価する立場の人は、まだ「1字下げ」を論述の品として扱うであろうと考えます。
新聞の記事でも、公用文では、「1字下げ」を要領に記載しているとあります。たしかにそのように書いてありました。
引用:「公用文の書き方p.16より」
ネットワーク社会における情報発信の作法は今後ますます変化していくことになるでしょう。作法が、公用文も変化させる時代になったら見直すことにします。
この「1字下げ」については、しばらく、アンテナを高く上げて情報受信していきたいと思います。変化でお知らせ出来そうなことが出てきましたら、また書かせていただきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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作成2017年6月9日 更新2020年12月14日一部内容を更新誤字訂正