まねき猫の部屋

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チーム力向上の課題づくり STEP1 KPT法による振り返りと問題仮説選定まで

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 今週は、チーム力向上の課題づくりをファシリテーションした時の事例をご紹介します。先週、リポート添削の話として「チームワークのレベル改善」について書きましたが、その実践版になります。何か1つでもヒントになれば幸いです。

 

 「チーム力向上の課題づくり」は、

 STEP1 KPT法による振り返りと問題仮説選定まで(今回)

 STEP2 課題設定(あるべき姿の設定と具体的な課題作り)(次回)

 の2回に分けてお届けします。2回目は予定投稿を設定しました。

 ということで、2回おつきあいください。

 

 さて、このチーム力向上のファシリテーションすることになったいきさつです。

 私が会社員時代の定年間際のころです。(だいたい2年前)

 人材育成の担当の方から相談を受けました。

 「ある職場のチーム力向上のためのプランを、そのメンバー達と作らないといけない。何かいい方法はないだろうか?」

 というものでした。

 担当の方が相談先に私を選んだのは、私が品質改善のファシリテーションをしていて、その手法が人材育成のチーム力向上に使えるのではないかと踏んだようです。

 その手法とは、当時振り返りの手法として活用を始めた「KPT法を用いたブレインストーミング的な振り返りの話し合い」と「ワールドカフェ手法を用いた課題形成」でした。

 「チーム力か」おもしろそうなテーマです。受けることにしました。

 さっそく、具体的な進め方を、検討しました。

 ① 職場メンバー全員参加でKPT法による振り返りを行う

 ② 振り返り結果から、このチームが取り組むべきテーマ(問題仮説)を決める

 ③ そのテーマ(問題仮説)を検証しながら、現状とあるべき姿を描き直す

 ④ 現状とあるべき姿のギャップから、問題を抽出し取り組む課題を決める

 という流れで行うことにしました。

 ①と②がSTEP1で、③と④がSTEP2です。

 この作業を、1日x2回で進めるスケジュールにしました。

 多くのメンバー(今回は、15人)を、2日間も拘束して話し合いを行うことになります。成果が見えないと次のお声がかからなくなります。ので準備もしっかり行いました。

 具体的な進め方を詰め、実際の場面をイメージトレーニングしながら進行の様子を自分の身体に浸透させていきました。

 そして、本番、実際のSTEP1が始まりました。

 おっと、その前にKPT法についてご紹介しないといけません。

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 KPT(ケプト)法を実践された方や、知識としてはご存じの方も多いと思います。

 ソフトウェアの進捗確認や、プロジェクトマネジメントなどでは、よく使われる振り返り手法です。活動の途中や終わりに行う評価プロセスの1つになります。

 1.何が良かったのか、今後続けたいもの、工夫したこと(Keep)
 2.何が問題だったのか、新たに問題として出てきたこと(Problem)
 3.1と2を踏まえて、次回やってみたいこと、新たに挑戦したいこと(Try)

 この3つの視点から、メンバーで話し合った内容を分けて書いていきます。

 

  改めて、実際の取り組みの場面に戻します。

  始めに、メンバー全員が集まったところで、進め方を説明します。

   ・個人ベースで、それぞれポストイットに書きだしてもらうこと

   ・その後、一人一人がそのポストイットを発表してもらうこと

  シートに張り付けていくことで「見える化」ができるとSTEP1終了

 となることなどです。

  発表形式で行っている部分は、私なりの工夫がいろいろ盛り込んであります。

  実際にKPT法で完成したシートの事例をご紹介します。

  さきほどのKPTの説明とイメージが合うように、品質で行った事例になります。

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 内容が生々しいこと、守秘義務があるので、読めない解像度でアップしています。
 ごめんなさい。

 ポストイットは、一人10枚以内として書いてもらいました。

 時間も30分に制限しています。

 この時間と枚数を制限していることがとても重要なポイントになります。

 集まるポストイットは、10人いると約100枚、20人なら約200枚くらいになります。みなさん時間が足りないという割には、きちんと10枚近く書いてくれます。

 

 さて、この手法をチーム力向上の検討に応用するのに心配したのが、具体的にポストイットを書いてもらうにはどうするかです。

 品質の不具合では、テーマは明確です。ある製品の再発防止にしろ、未然防止にしろ、やるべきことの方向性は大体はっきりしています。

 しかし、チーム力の向上を行う場合、そもそもそのチームの何が問題で、向上させないといけないことは何か、はっきりしていないことが多いのです。多くは暗黙化しています。(水面下に隠れている)

 今回のケースについて担当者に、チームの様子を聞いてみるとやはり問題点がはっきりしない様子でした。事業部長から言われて取り組むことになったそうです。

 検討段階でずいぶん思案して、KPT法の振り返りを進める上で、チーム力分析用の思考のヒントというか分類を用意することにしました。

 具体的には、振り返りする時に、以下のようなヒントを示したのです。

 この思考のヒントは、組織の7Sというマッキンゼーが開発した分類の基準を採用しました。基準はなんでも良かったのですが、私が日頃からリポート添削でお世話になっていて、ファシリテーションしやすいと思ったからです。

 とはいえ、初めての工夫を入れるときは、うまくいくのかいつも不安です。

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 この組織の7Sは、それぞれが、以下のような意味を持っています。

「組織の7S」を構成する経営資源の振り返る視点
・ 「戦略(Strategy)」   →戦略の方向性や戦略そのものの妥当性
・ 「組織構造(Structure)」 →組織体制や組織の協力的な人間関係の状況
・ 「組織運営(Systems)」 →情報伝達のルート、業務フローはうまく回っているか
・ 「スキル(Skill)」    →組織の技量や組織の能力の状況
・ 「スタッフ(Staff)」   →組織としての人材の質、傾向はあるか
・ 「スタイル(Style)」   →風土、組織文化に固有の問題はないか
・ 「価値観(Shared Value)」→社員の共通の価値観はどうなっているか

 「戦略(Strategy)」、「組織構造(Structure)」、「組織運営(Systems)」の3つはハード面になります。物理的に確認しようと思えば観察可能な「見える部分」です。

 一方、「スキル(Skill)」、「スタッフ(Staff)」、「スタイル(Style)」はソフト面となり、一般的には暗黙化していてなかなか認識ができない「見えない部分」となります。

 「価値観(Shared Value)」は、6つすべてに関係するベースとなる概念です。

 こうした点を、学習する組織という研究では、「氷山モデル」として定義している場合もあります。(ここでは、その詳細は省きます)

 実際にこの思考のヒントを元に、KPTで書いてもらうには、もう少し具体的な例を示さないと難しいものです。そこで、以下のような説明の例も用意しました。A0に印刷して壁にも貼っていつでも確認できるようにもしました。

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 進め方や書き方を説明したら、30分間「もくもく」と書いてもらいます。メンバーの横に行ってその様子を観察し、困っている人にはアドバイスをしていきます。

 そうして、30分。書き終わったら、一人ひとり発表をしてもらいます。

 ファシリテーターの力量が問われる時間です。

 意見が出やすい雰囲気を作ったり、活発な意見がでる場にしていきます。

 たとえば、発表した意見と同じ意見を持っている人を確認し、持っていたらその場で手を上げてもらいます。内容を聞き、合っていると皆が同意したら、出てきてもらって同じ場所に張り出す作業をしてもらいます。そして、その場に一緒にいてもらうのです。こうした方法を繰り返します。手持ちのカード(ポストイット)が早く無くなると気持ちがいいのか、ちょっと強引に同じ意見だと主張する人も出てきます。でも、制止しません。とにかく、わいわいがやがやとやれることが大切です。なので、いつも予定時間をオーバーします。
 (そのことも予定には入れてもあります。むしろ超過しないほうが心配)

 

 発表が終了するとチーム力分析のKPTではこんなシートが完成しました。

 (7Sをどうならべるかもずいぶん苦労してこの形に落ち着きました)

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 右側のProblem(問題点)が沢山出ています。

 張り終わったところで、メンバー一同から拍手が出ればまずまず成功です。

 (めでたく、拍手をいただきました)

 メンバーの人にはここで、一旦休憩してもらいお昼ご飯を食べてもらいました。

 しかし、その間に私や事務局はこのシート情報から、次の作業、テーマ選定用の資料作りをします。休む時間は無しです(^_^;おにぎりかパンを食べながら準備します。

 作成するのは、以下のようなレーダーチャートです。それとすべての意見をエクセルに貼り付けたファイルをメンバー共有のフォルダーに格納しておきます。

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 このチームの場合は、メンバーの関心事が「組織運営」にもっとも多く集まっていることが分かります。2番目は「戦略」、3番目は「スタイル」つまり組織の風土・文化です。

 このシートを用いて、次の作業に入ってもらいます。午後のSTEP1の後半②の部分の開始です。

 まず、全員でこのレーダーチャートを見て、何をテーマにするか話し合ってもらいます。1番はすぐにやろうとなりました。この時は、メンバーが多かったので2番、3番もテーマにして、メンバーをサブチームにを分けて話し合いをしてもらいます。

 メンバーの性格や力量などを推定しながら、チームの責任者と分担を決めました。

 話し合いでは、テーマの関心事として多い理由(原因)を深掘りしてもらいます。

 グループディスカッションでKPTで出てきた内容「事実・想い」の理由・根拠を考え、問題の仮説を立ててもらいます。それを、下のような系統図の形でまとめてもらいます。

 イメージはこんな感じ(作成の作業用に用意した説明資料から)

 

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  このシート作りにいちばん時間をかけます。上の事例の他、いくつかのまとめ方を提示して、そのメンバーがいちばんやりやすい方法をとってもらいます。

 まとまったら、(とはいっても時間通り終わらずにひやひやします)

 発表を、サブチームごとにしてもらいます。

 実際の発表風景の1コマです。(個人が特定できないように加工しています)

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 右端の立っている人が、発表者です。左側に並んで立っている人たちがサブチームのメンバーになります。

 席で座って聞いているのが、それ以外のサブチームのメンバーです。

 これをサブチームの数だけ行います。

 そして、全体をメンバー全員で共有できたら、STEP1は終了となります。

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 こんな風にまとめてくれたチームもありました。

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 STEP2のための準備をお願いして閉会宣言をして、解散となりました。

 次回は、STEP2の様子をお伝えします。

 (12月5日火曜日の9時に公開するよう予定投稿しました)

 普段と比べると、長文のブログになりました。

 今日も最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。